ダイエットの相談を受けていると、よく耳にするのが
「全然食べていないのに痩せにくい」
「バランスよく食べているのに太る」
という声です。
単に摂取カロリーが多いわけでもなく、食べる量を減らしても体重が落ちない…
このようなケースの裏には、体が糖質をどのように処理するかという能力が深く関係していることがあります。
その体に備わった能力の事を
「耐糖能」
といいます。
耐糖能とは、食事で摂った糖質(炭水化物)が血糖値を上げ、その血糖をどのくらい効率よくエネルギーとして使えるかを示す体の機能です。つまり、耐糖能が高ければ糖質をスムーズに使えて太りにくい体を保てますが、逆に耐糖能が低下すると「食べた糖がエネルギーにならず、脂肪として蓄積されやすい体」になってしまうのです。
実は、耐糖能の状態は年齢、運動不足、食生活の乱れ、ストレスなどによって変化します。そしてこの耐糖能の低下こそが、「努力しているのに痩せない」「糖質を摂るとすぐ太る」といった停滞の大きな原因になっているのです。
この記事では、パーソナルトレーナーとしての視点から、
- 耐糖能とは何か
- 耐糖能が低下するとダイエットにどんな影響があるのか
- そして改善するために日常生活でできる工夫
について、初めて聞く方にも分かりやすく解説していきます。
耐糖能とは?
「耐糖能(たいとうのう)」とは、体がブドウ糖を中心とした糖質を処理する力のことを指します。
私たちがご飯やパン、麺類などの炭水化物を食べると消化され、ブドウ糖に分解されて血液中に吸収されます。
その結果「血糖値」が上昇します。
血糖値が高くなりすぎると体に負担がかかるため、膵臓から「インスリン」というホルモンが分泌されます。
【血糖値が高くなりすぎると体に負担がかかる理由】
インスリンの役割は、血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓、脂肪組織に取り込み血糖値を一定範囲に戻すことです。
耐糖能セルフチェックリスト
こちらの7項目、おなたはいくつ当てはまりますか?
✅ 炭水化物や甘いものを食べると、すぐにまた食べたくなる
✅ 少し食べただけでも体重が増えやすいと感じる
✅ 間食や夜食がやめられない
✅ 集中力が途切れやすく、午後にだるさを感じる
✅ お腹まわりに脂肪がつきやすい
✅ 家族に糖尿病や生活習慣病の方がいる
以下の項目に 3つ以上当てはまる方 は、耐糖能が低下している可能性があります。
その様な方は特にこの記事をご覧頂きできる事から対策してくれたら嬉しいです。
耐糖能が高い状態
インスリンが効率よく働き、血糖値をスムーズに下げられる状態を指します。
- 食後の血糖値が安定しやすい
- 糖が筋肉でしっかりエネルギーとして使われる
- 脂肪として蓄積されにくい
つまり、「太りにくくエネルギーがしっかり使える体」の特徴です。
耐糖能が低い状態
一方で耐糖能が低いとインスリンの効きが悪くなり(いわゆるインスリン抵抗性)、血糖値がなかなか下がりません。
- 食後に血糖値が急上昇しやすい
- 余った糖が脂肪として蓄積されやすい
- 血糖値が乱高下して食欲や体調に影響を与える
つまり、耐糖能が低下すると「血糖値が乱れやすい体」になり、ダイエットがうまくいかない大きな要因になります。
耐糖能が低下すると起こる3つの問題
1. 脂肪がたまりやすくなる
耐糖能が低下すると、食事で摂った糖質がうまく筋肉に取り込まれずに余った分が脂肪として蓄積されやすくなります。
「同じ量を食べても太りやすい人」と「太りにくい人」の違いは、この糖の使われ方にあるのです。
特に内臓脂肪がつきやすく、代謝がさらに落ちる悪循環に陥ります。
【内臓脂肪の増加によって代謝が落ちる理由とは?】
2. エネルギー不足による疲労感
糖質は本来、体を動かすための大切なエネルギー源です。
耐糖能が低下すると、食べた糖質をうまくエネルギーに変換できないため、常に「だるい」「疲れやすい」という感覚が出やすくなります。
トレーニングをしても力が出にくく、運動の効果が半減してしまうのも大きな問題です。
3. 血糖値の乱高下による食欲の乱れ
耐糖能が下がると、食後に血糖値が急上昇し、その後インスリンの働きで急降下します。
この血糖値の乱高下が
「甘いものがやめられない」
「食後すぐに眠くなる」
などの原因となります。
結果として、必要以上に食べてしまったり、間食が増えてダイエットの妨げになってしまいます。
パーソナルトレーナー視点で考える「耐糖能とダイエット」
私が日々トレーニング指導をしていて強く感じるのは、耐糖能が低下している人ほど「糖質=太る原因」と誤解しているということです。
しかし実際には、糖質は筋肉や脳のエネルギー源として欠かせない栄養素です。むしろ糖質を極端にカットしてしまうと、筋肉量が減少して基礎代謝が落ち、結果的に「痩せにくい体」をつくってしまいます。
大切なのは、糖質を抜くことではなく 「耐糖能を改善して糖を効率的に使える体をつくること」 です。
具体的な耐糖能改善アプローチ
1. 筋トレで筋肉量を増やす
筋肉は糖を取り込む受け皿のような役割を持っています。
筋肉量が多い人は、食後に血糖値が急上昇しても効率よく糖を筋肉に取り込み、エネルギーとして消費できます。
逆に食事制限のみでダイエットをした場合、糖質をエネルギーとして消費できる機能も低下している為、脂肪として体内に留まりやすくなってしまいます。
筋トレをしようと思った時に最近はやりのヨガやピラティスのような体幹トレーニングをおこなう方がいますが、ダイエットを目的とした場合は不十分です。
スクワットやデッドリフトといった下半身の大筋群を使うトレーニングは効果的で、耐糖能の改善に直結します。
2. 適度な有酸素運動を取り入れる
ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、インスリンの働きを助け、血糖コントロールを改善します。
サイクリング(自転車)
- 膝や腰に負担が少ないため、中高年の方や体重が重い方でも始めやすい
- 下半身の大筋群をしっかり使うため、血糖処理能力を高めやすい
水中ウォーキング・水泳
- 水の浮力で関節に優しい
- 水の抵抗を使うので消費カロリーも大きく、短時間で効率的に血糖コントロール改善が期待できる
階段昇降(ステップ運動)
- 自宅でも日常的に取り入れやすく、短時間でも効果大
- 下半身を大きく動かすため、筋肉が糖を積極的に取り込む
ジムのスタジオメニュー・ダンス
- 音楽に合わせて体を動かすので楽しみながら続けやすい
- 下肢だけでなく全身を使うため糖の消費効率が高い
ハイキング・トレッキング
- 心肺機能を高めつつ、変化のある動きで大きな筋肉を活用
- 屋外での運動はストレス軽減効果もあり、間接的に血糖コントロールを改善
糖の利用効率が高まりより効果が得られます。
3. 食事でGI値を意識する
ダイエットを成功させる上で、食べ物の「質」を意識することはとても重要です。
そのカギになるのが GI値(グリセミック・インデックス)。
この数値は食品を食べたときに血糖値がどれくらい早く、どの程度上がるかを数値化したものです。
GI値が高い食品ばかりを摂ると血糖値が急上昇し、それを下げるためにインスリンが大量に分泌されます。
インスリンには余った糖を脂肪として溜め込む働きがあるため、脂肪蓄積が進みやすくなります。
逆に、GI値が低い食品を選ぶと、血糖値の上昇が緩やかになり、インスリンの分泌もコントロールしやすくなります。
これにより、体脂肪の増加を防ぎつつ、エネルギーとして糖を効率的に使える体になります。
耐糖能を意識した実践しやすい食品の選び
主食の工夫
- 白米
→ 玄米や雑穀米に変える - 食パン
→ 全粒粉パン - うどん
→ そば
食べ合わせの工夫
- 炭水化物だけで食べない
- 肉や魚などのタンパク質、野菜や海藻などの食物繊維を一緒に摂る
→ 血糖値の上昇がさらに緩やかになります。
耐糖能に対するトレーナーの視点
実際に指導しているクライアントさんの中でも、「白米を雑穀米に変えただけ」「麺類の回数をうどんからそばに置き換えた」などの小さな工夫で、日常的な行動を変えずに体脂肪の減りがスムーズになった例はたくさんあります。
【まとめ】耐糖能とダイエットの関係
耐糖能と言われてもあまりピンとこないかたも多かったのではないでしょうか?
ですがダイエットをしていくにあたり、重要ワードだという事をこの記事を読んで理解して頂けたら嬉しく思います。
「こんなに頑張っているのに」
「食べていないのに痩せない」
「糖質を摂るとすぐ太る」
と感じる方は、もしかすると 耐糖能の低下 が関係しているかもしれません。
これが低下すると、血糖値が乱れやすくなり、太りやすさや疲労感、リバウンドにつながってしまいます。
なので筋トレで筋肉量を増やし有酸素運動でインスリンの働きを助け、食事もう少しこだわってGI値を意識することで血糖値を安定させ、余分な脂肪をつけにくくすることができるようになります。
糖質は「悪者」ではありません。
むしろ筋肉や脳の大切なエネルギー源であり、大事なのは糖質を正しく使える代謝力の高い体、耐糖能の高い体をつくることなのです。